Wednesday, April 1, 2009

鉱石検波器

鉱石検波器(こうせきけんぱき)は、半導体の性質を有する鉱石に金属針を接触、ショットキー障壁を利用して、整流作用を得るようにしたものである。世界最初の半導体部品であり、点接触型ダイオード、ショットキーバリアダイオードの原型である。日本では天然鉱石だけでなく、シリコン(ケイ素)、ゲルマニウム結晶などを使った検波用ダイオードをまとめて鉱石検波器と呼ぶことが多い。他に金属針を用いず、異なる鉱石同士を接触させた構造のものなどもある。

1874年、ブラウンによって金属硫化物に金属針を接触させることにより整流作用が生じることが発見され、1904年、ボースが方鉛鉱に金属針を接触させたもので、検波器としての最初の特許を取得している。日本では、逓信省電気試験所の鳥潟右一がほぼ同時期に発明している。鉱石検波器は、世界中でほぼ同時期に少しずつタイプの異なるものがそれぞれ発明されているため、最初の発明者が誰なのかについてははっきりしていない。

初期の鉱石検波器は、方鉛鉱や黄鉄鉱などの天然鉱石に金属針を接触させ、ほぼ毎回、感度の良い部分を金属針を動かし探って用いる方式のものであり、不安定で調整の難しいものであった。 電流はショットキー障壁の高さに大変敏感であり、そのわずかな変化により桁違いに変化する。すなわち方鉛鉱や黄鉄鉱などの天然鉱石は、結晶方位不定の多結晶体であり、原子的観点から観ると、粗い表面を持つ多結晶面に、粗い表面を持つ金属面を接触させていることになるため、不安定きわまりなく、その使用のために、懸命に感度の良い部分を探すことになる。また一度、感度の良い部分を見つけても、空気中に置かれている鉱石の表面、そして金属針の表面は容易に酸化や水酸化される。従って使用のたびに、金属針により鉱石の表面を引っかき、金属と半導体の界面を再生させて使わなければならないのである。

しかし従来のコヒーラとは異なり、整流作用があることから無線電話の受信機に用いることができるため、世界的にラジオ放送が始まるとラジオ受信機の検波・復調器として用いられた。 その後、特性の安定した、信号増幅のできる真空管の登場により一時、廃れていたが、トランジスタとともに再び実用に供されるようになった。

1906年、ピカードがシリコン結晶に金属針を接触させて使うことで特許を取得した。単結晶に金属針を接触させることにより比較的その特性が安定、ピカードの発明は広く実用に供されることになった。結晶により検波ができることが見出されたことにより、以降、鉱石検波器はクリスタル検波器ともよばれるようになった。この発明はその後、無調整、量産型の鉱石検波器である点接触型ダイオードとなり、ショットキーバリアダイオードへとつながった。

鉱石検波器はショットキーにより、その微視的動作原理の解明がなされた。しかしながら、安定したショットキー障壁の製造は難しく、工業的製造面においては現在に至るも未完成の部分がある。工業的に安定したショットキー障壁の製造が容易となれば、多くの半導体部品の飛躍的な能力の向上や、新たな半導体素子の発明につながることが期待できるため、鉱石検波器の発明にはじまったその研究、開発は現在も半導体の最先端分野として進められている。

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